日本代表がブラジルに逆転初勝利

2025/10/14 キリンチャレンジカップで、日本代表がブラジルに逆転で初勝利した試合のシステム(フォーメーション)や日本の1失点目の場面についてです。
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両チームの状況
日本
2026FIFAワールドカップ(以下W杯)アメリカ・カナダ・メキシコ大会のアジア予選が全日程終了、断突の強さで本大会出場を決めています。
DFや、遠藤航など守備的MFの主力選手数人が負傷で欠く中、DF谷口が負傷から復帰。所属クラブのシント・トロイデンでは既にプレーしていますが、日本代表は1年ぶり。
日本はブラジルに過去13戦未勝利です。
ブラジル
同大会の南米予選が全日程終了、本大会出場を決めています。
とはいえ南米10チーム中5位。プレーオフに回らずに本大会出場は6位以内。断突首位のアルゼンチンを除いて拮抗(きっこう)し、無得点の試合もあり、厳しい予選通過でした。
欧州で実績のあるアンチェロッティ監督を招聘(しょうへい)して失点を減らし、W杯本戦に向けて構築と選手選別をしている状況です。
ネイマールやラフィーナが不在でした。
両チームの基本システム
ブラジルの選手名はJFAのサイトを元にしているので、地上波の表記と異なる選手がいます。例えばエンリケは地上波ではエンヒッキと表記していました。

上図をマッチさせた図がこちら。つまり、基本的にはこうなるはずです。

両チームの守り方
左半分はブラジルボール時の日本の守り、右半分は日本ボール時のブラジルの守り、です。

日本の守り方
日本のフラット5は時にセンターサークル内の高さにもなり、極めてコンパクトです。
ブラジルは両ウィングがタッチ際に広がります。両IHは時に日本の最終ラインに割り込んだり著しく上下動してかき回します。トップの(7)ビニシウスも張ってばかりではなく受けに下りたりします。
本来中盤にもう1人回したいはずですが、両ワイドの突破対応や、隙間を空けないための現実的方法でしょう。
ブラジルの守り方
日本が押し込んだ時のブラジルは4バックが並びますが、オフサイドを取るより、裏に抜ける日本選手にはついていくマンマークを重視します。
常に4人いて、うち誰かがつり出された場合は別の誰かが最終ラインに入ります。
サイドをついてきた選手は基本的にウィングが対応します。例えば図にはありませんが、(20)久保が深く突く際には(22)マルチネッリが戻っています。
ちなみに日本の2失点目は裏に抜ける相手選手についていかず(いけず)、ここが失点するか否かの大きな差となりました。
日本の1失点目
前半26分の場面です。
ここに注目した理由は、ブラジルの巧さが表れ、また両チーム最初の得点でW杯本戦を見据えた場合にこのまま終わる可能性もあるからです。
黒い矢印はボールの移動、色の矢印は選手の移動、を示します。実際は図よりも狭い領域で行われているので、映像と見比べることをお勧めします。

時系列
- (19)L.エンリケがタッチ際に張って(13)中村の意識を引き付けている【※1】。
- (7)ビニシウスが右にサイドチェンジし、(4)渡辺に寄る。
- RSB(13)P.エンリケが受け、(8)ギマランイスに預ける。
- (8)ギマランイスが(11)L.パケタに挿し【※2】、(25)鈴木が寄せる。(8)ギマランイスに1タッチで戻す。
- (8)ギマランイスが(25)鈴木の裏に1タッチでスルーパス【※3】。(13)P.エンリケが抜ける。
- (3)谷口が(22)マルチネッリのマークを外してカバーに行くが止められず、(13)P.エンリケのゴール【※4】。
重要ポイント4点
- ※1 中村に絞らせないことでCBとのスペースを空けている。
- ※2 この時点で(13)P.エンリケは前に走り出している。
- ※3 (8)ギマランイスは受けて出す間にバックスタンド側に5mずれてパスコースを作っている。
- ※4 ブラジルが押しこんでいるとき既にRSBのP.エンリケがインサイドでプレーしている、動きやシュートも攻撃的選手かのように自然にこなしている。
※3はゴール裏からの映像がわかりやすいです。
考察
日本のフラットな最終ライン裏に浮き球で出された2失点目も同様、特に数的不利を作られたわけでもないのに「通す技術」は超一流といえるでしょう。
この、縦に一旦挿して食いつかせ、再度縦への3人目に出す手法は、元日本代表の遠藤(ヤット)が時折見せていた形でもありました。
過去の日本に比べて良かった点
局所で攻守において対人で勝っていた場面が増えました。前半終了間際のファウルにならなかった久保の仕掛けや、各所での守備など、全体に見られました。
過去日本がボール保持している時は、持たされている、出し手がなくて回させられている場面が多かったのですが、今回は縦に挿す、裏に抜ける意識や狙いが格段に増えていました。
どう評価するか
親善試合や強化試合は試しの選手交代もあるなどで、前後半分けた評価と、総合での評価と2面で考えたほうがいいでしょう。特に今回の後半のような事がW杯本番であるかというとそれも考えにくいです。
とはいえ、前半の反省でマンツーでプレスにいき、相手のミスを誘発したことも事実です。
勝てたことがなかったブラジルに勝利した、日本サッカー史に残る一夜でした。
当サイトのボード用データ
最後に、アイコン版フォーメーション図作成や戦術作戦タクティクスボードに読み込める、表題とスタメンデータを載せておきます。
選手は「テキスト」タブの「テキスト読込」でボードに反映されます。
2025/10/14 キリンチャレンジカップ 東京スタジアム
1,鈴木彩艶,4,渡辺剛,3,谷口彰悟,25,鈴木淳之介,10,堂安律,21,佐野海舟,15,鎌田大地,13,中村敬斗,20,久保建英,8,南野拓実,18,上田綺世
1,ソウザ,13,P.エンリケ,14,F.ブルーノ,15,ベラウド,24,C.アウグスト,8,B.ギマランイス,5,カゼミロ,11,L.パケタ,19,L.エンリケ,7,ビニシウス,22,マルチネッリ
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