ボールを出す、返す
規則にない負傷におけるボールを出す、ボールを返すという暗黙のルールについてです。返す手順と注意、ボールを出すか否かの判断の難しさにも触れています。
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ルールにないルール
サッカーは国際サッカー評議会(IFAB)で制定されたサッカー競技規則に基づいて試合が行われます。
ところがこの規則に載っていない「ボールを出す」「ボールを返す」という暗黙のルールがあります。
これらは特に呼び方があるわけでもなく、ここでは以後そう書きます。広く使われていますし、たいてい通じるはずです。
ボールを出すとは
負傷とプレー続行
試合中にフィールド(ゴールキーパー以外)の選手が負傷で倒れてすぐに起き上がれない場合、主審は負傷の度合いの様子でプレーを続けるか否かを決めます。
競技規則 第5条にこう記されています。
- 負傷が軽い場合、ボールがアウトオブプレーになるまでプレーを続けさせる。
- 重傷を負った場合、プレーを停止し、確実にその競技者をフィールドから退出させる。
アウトオブプレーとは、ボールがラインから出たり、主審がプレーを停止した場合を言います。つまり、主審が止めない限り続行されます。
ボールを一旦出す
とはいえ、負傷しているチーム側は倒れた選手が戻るまで少ない人数で不利ですし、あまりにも危なそうな場合はどちらのチーム問わず、選手自ずから故意にタッチラインにボールを出すことがあります。
これを「ボールを一旦出す」と言います。
ここで主審はプレーを停止し、復帰や、長引きそうな場合はタンカでフィールド外に運ばれた後、再開されます。
プレー再開
規定ではボールをタッチラインから出したチームの逆側のチームのスローインです。ですがこれには問題がある場合があります。
- Aチームの選手が負傷。
- その時ボールを保持していたBチームが気遣ってタッチラインに出す。
- 再開後Aチームのボールとしてスローインになる。
これではBチームにとって不公平です。
そこで、「負傷でボールを出した場合、再開後相手にボールを返す」という暗黙のルールがあります。
ボールを返すとは
手順と注意
上の例でいうとこのようにします。
- Aチームがスローインで味方選手に渡す。スローインの際Bチームは妨げる行為をせず、ただ見ている。
- スローインを受けたAチームの選手は、ボールをBチームの基本的にゴールキーパーにやさしく蹴って渡す。
- Bチームのボールとしてプレー再開。
相手ゴールキーパーへとは以下の意味があります。
- 渡った直後攻められないように。
- お互いの各選手のポジションや気持ちをニュートラルに。
渡す場合、相手ゴールキーパーが取りやすいように、誤ってそのままゴールインしないようなるべくゴールを少し外すといいでしょう。
いつ、いかなる場合でも
ボールを返す行為は以下のような場合でも必ず行います。
- ボールを出したチームが、負傷した側でもその相手側どちらでも。
- 負けていてどんなに時間がなくても(中断中の時間は追加されることになっています)。
- 国内外、男女、カテゴリー問わずサッカー全て。ワールドカップから河川敷の草サッカーや少年少女のサッカーに至るまで。
関連事項
例外
負傷選手がゴールキーパーであれば、主審はプレーを停止して復帰または交代を待ちます。
負傷ではなく外部要因(部外者や犬が入り込んだなど)の場合は、主審はプレーを停止して要因を排除後ドロップボールで再開します。ドロップボールとは、主審がその場にボールを落としてプレーを再開する方法です。
観客
現地観戦の方は、返すチームが応援側であれ相手側であれ、拍手をするといいでしょう。それが自然に起きるといいです。
事故
Jリーグなどで実際あったことですが、上の例で書くとこんなことがありました。
- Aチームがボールを返す。
- Bチームに渡る前にAチームの選手が横取りし、相手が油断してる隙にゴール。
- ルール上得点は認められ取り消しはできず。
- 後にAチームが故意にBチームの1得点を許す。
気持ちが高ぶることはありますが、こうならないように常に状況を見るようにしましょう。
ボールを出すか否かは自主判断
ボールを返すことは必ず行うべきことですが、そもそもボールを出すか否かは時に少々難しいことがあります。
倒れている選手は時間稼ぎで痛んでるフリをしているかもしれません。残り時間少なく負けている側が得点チャンスに近く流れを落としたくないために続ける場合も見られます。
といっても、いかなる場合も規則にないからしなくていいでもありません。相手側でも明らかに強く痛んでいるのを見過ごせないでしょう(本来主審が止めるべきですが)。
またマナーの「守らなくてはいけない、守るべき」のニュアンスとも違います。もっと選手各々の状況判断力や自主性が重んじられます。
同じチーム内でなぜ出さない、なぜ出したと言い合う場面もたまに見られます。どちらにしろ相手をリスペクトしているか否かが基準の1つとなるでしょう。
なぜ規定にしないのか
ボールを返す場面はどこでも少なからず見られます。手順も定常化していますし、ならば規則に組み込んでおけばと思う方もいらっしゃるでしょう。
あくまで予想ですが、規則として縛るよりフェアプレーの一環として位置づけているのではないでしょうか。実際すでに浸透されており、またそれは素晴らしいことと思えます。
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