サッカー観戦者から見た新国立競技場の新デザインAとB
新国立競技場の新デザインA者案とB者案を、旧国立にも行ったサッカー観戦者の立場から書きます。両提案書をざっと目を通した印象です。
はっきり言って上から見た奇抜さはいらないのですよ。誰にでも観やすく快適で安全であれば。
イベントが開催されない日の方がほとんどで、白いゾウ(費用がかかる厄介者の意)とならぬよう、いかに周囲から浮かないか圧迫させないかも大事な要素です。この周辺は緑もありジョギングなどをされる方も多く、両案ともによく配慮されてると感じます。
広告
A者B者案共通
どちらの観客席も旧国立同様すり鉢状で観やすそうです。どちらも木を意識し、また低く抑えられています。
芝の育成や回復に日照が必要なため屋根に透過部分を設けますが、太陽の位置を考慮して開口部と同心円にはならず南側に偏ります。透過部分を増やすと特に夏場観客へ日が当たるので両案ともバランスを考慮しています。
以下に、それぞれの特徴をリスト形式にしました。
A者案
ハンバーガーとも呼ばれています。
外観
- 木材を多く用い、法隆寺五重塔を例に柱・梁・垂木や層の重ねは和を連想。
- 50m以下に抑えた高さと、上部を内側に向けて圧迫感を軽減。
- 最上階には外階段から直接上って市民開放。
内観
- 屋根下にも木材を垂木のように使用。メンテナンスに移動式ゴンドラを設置。
- 3層構造で席の傾斜は下からおよそ、20°、29°、34°。
印象
和を連想させて外国人の方々にも楽しんでもらえそうです。当案のように都心で外壁部に緑を同化させるデザインは増えていますね。
提案書は利用者側の立場で利点がわかりやすく、視覚・聴覚障がい者やご年配やお子さん連れの方への配慮の具体性が見えて好感でした。
B者案
寿司とも呼ばれています。
外観
- 並状の屋根内側縁。
- 周囲を並ぶ長さ19m太さ1.4mもの木柱。
内観
- 2層構造で上下がわかりやすい動線。
- 自然や季節と同調した演出照明。
印象
見た目最大の特徴とも言える屋根の波について、施工方法は支えの根元の角度を少しづつずらすと具体的に書かれていましたがその効果は特に読み取れませんでした。透過部分が開口部と同心円にならない見た目の配慮なのでしょうか。
柱根元は落書き対策で覆いをされそうですが、圧巻と思われます。その外側に並ぶ支柱は残念ですが構造上仕方ないのでしょう。
観客席の傾斜
さて、観戦で最も重要な要素といっても過言ではない観客席の傾斜についてです。
フィールド近くで選手と目線を近くしたい方、高くから全体を見下ろしたい方、好みは様々でしょうが無難なところではないでしょうか。傾斜が多いと見やすいですが上は恐怖感を感じる方もいるでしょうし、ご年配など階段差の考慮も必要でしょうし。
個人的には拡張後の最前列で更に緩くなる席も魅力です。
その他
両案とも屋根あり一番の懸念である鳥害対策の記載が特に見当たりませんでした。A者案はゴンドラがあるとしても。鷹を飛ばすのでしょうか。
サポーターのチャント(応援歌)の反響音のシミュレーションも見当たらず、そこまではという感じでしょうか。
ところで、聖火台、2体の像、フィールドに立ってたポールがどうなるかも楽しみです。
いずれにしろ短期間でここまで仕上げた両案には脱帽です。前回のザハ氏案のような派手さはありませんがどちらも日本らしくてとてもいいです。
結果、A者案が採用になりましたが竣工が楽しみです。
提案書や図面の詳細などはこちらを参照願います。 → 新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会(外部リンク)
初版 2015-12-16 / 最終